リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
明子のその幼い思い出を、微笑ましく思いながらも笑っていた君島と小林は、慌てふためき驚いたような顔で明子を見て、安堵の息を吐いた。

「ビックリさせるなよ。お前」
「まったくだ。泣かせたりしたら、ぶん殴られるよ、あのでかい男に」

焦ったと、息を吐く君島と小林に、明子はふんと鼻を鳴らす。

「面白がって、からかうからですよ。なににもないって何度も言ってるのに、しつこいし」

ポカポカと、明子は君島の背中を軽く叩いていく。

「もう。いいぞ。ありがとな。だいぶ、軽くなった」

明子の手を止めると、君島を手を上に伸ばして、上半身をぐぅっと伸ばしていく。
思い切り、息を吸い込んで、吐き出して。

そうして、静かな声で、明子に訥々と語り出した。

「まあ。ちょっとばかり、ややこしくて面倒な性格だよな、あいつは。真っ直ぐなのに捻れているっていうか、捩れながら真っ直ぐに伸びたっていうか」

君島のその言葉に、牧野を表すのになんてぴったりな表現だろうと、明子は感心して頷いた。

「脆い紙も捩り合わせると硬くなるだろう。強くなるために捩れて。捩れたから真っ直ぐになれた。そんな感じなんだよな、あいつ」
「よく見てますね」

君島の後ろに立ったまま、明子も静かな声で言葉を挟んでいく。
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