リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
2.秘密が一つ。
最寄りのバス停で駅に向かうバスの到着を一人で待っていると、ぽつりと、手のひらに雫を感じて、明子は空を見上げた。
しまったと、思わず、明子は小さく舌を打った。
星の光ひとつない夜空は、すっぽりと黒い雨雲に覆われていた。
バックの中を見て、また明子は小さく舌を打った。
こんな日に限って携帯用の折りたたみの傘を、家に置いてきてしまっていた。
次第に、地面を濡らす雫の粒が増えてくる。
このバス停の一番の難点は、雨風を凌げるものが何もないということだった。
定刻通りの運行ならば、そろそろバスが来るはずだった。
このまま、バスを待つか。
会社に戻ろか。
逡巡して、空を見上げていると、一台の車が明子の前に止まった。
「乗りなさい」
運転席から、島野がそう明子に声をかけてきた。
「いえ。大丈夫」
です。
そう言い終わらないうちに、一気に雨が本降りになった。
「早く。乗りなさい」
急かす島野の言葉に、明子は助手席に乗り込んだ。
「すいません。会社で大丈夫ですから」
「家はどこだい?」
「あの」
「お家はどこですか?」
教えるまで尋ね続けそうだと観念した明子は、自宅からの最寄り駅の名前を口にした。
しまったと、思わず、明子は小さく舌を打った。
星の光ひとつない夜空は、すっぽりと黒い雨雲に覆われていた。
バックの中を見て、また明子は小さく舌を打った。
こんな日に限って携帯用の折りたたみの傘を、家に置いてきてしまっていた。
次第に、地面を濡らす雫の粒が増えてくる。
このバス停の一番の難点は、雨風を凌げるものが何もないということだった。
定刻通りの運行ならば、そろそろバスが来るはずだった。
このまま、バスを待つか。
会社に戻ろか。
逡巡して、空を見上げていると、一台の車が明子の前に止まった。
「乗りなさい」
運転席から、島野がそう明子に声をかけてきた。
「いえ。大丈夫」
です。
そう言い終わらないうちに、一気に雨が本降りになった。
「早く。乗りなさい」
急かす島野の言葉に、明子は助手席に乗り込んだ。
「すいません。会社で大丈夫ですから」
「家はどこだい?」
「あの」
「お家はどこですか?」
教えるまで尋ね続けそうだと観念した明子は、自宅からの最寄り駅の名前を口にした。