リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
【高杉兄弟の一週間 月曜日】

「高杉くん。ちょっといいかな」
花屋の店内から、先輩の上野に手招きされた文隆は、外に出ている鉢物の花がら摘みをしていた手を止めて、なんですかと上野に近づいた。
「ポインセチアがいくつか作業場に置いてあるんだけどね」
「あー。外にもいくつか置いてありましたね。もう、あれが出回る季節なんですね」
「そうだねえ。もう、クリスマスになるんだねえ。あー。また、彼女いないまま年取るんだなあ」
自分で言った言葉に傷つき、がっくりと項垂れる上野を、まあまあと文隆は宥め、呼ばれた用向きを尋ねた。
「そのポインセチアがなんですか?」
「そうそう。寄せ植えの鉢を作るから手伝ってくれるかな」


場面は変わって、寄せ植えの鉢物を作る作業台がある温室内。
「まずは、ポインセチアだけを使った寄せ植えを作るからね」
「いろんな種類があるんですね」
真っ赤なものだけでなく、桃色や黄色、緑かがった白いものや、スプレーを掛けられたような模様がついたものまで。いろんな種類のものが並べられていた。その中の一つを取って「これもポインセチアですか?」と、文隆は尋ねた。
「そう。ウィンターローズと言ってね。ちょっと薔薇みたい見えるだろう。切花なんかにしても楽しめる品種なんだ」
「ホントにバラみたいですね」
「そうだね。まあ、それは置いておいて。まずは、このミニポインセチアを使って作るね。いろんな色があってサイズも手ごろでね、寄せ植えにはもってこいなんだよ」
「なるほど。ポインセチアの寄せ植えを作るときに、注意することってありますか?」
「ボインセチアはね、根っこが弱いんだ。だから、寄せ植えするときは、ポットごと植えるか、ポットから出す場合でも根っこはなるべくいじらないようにして」
上野の言葉に、文隆はなるほどとまた頷いた。
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