リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
いつものように、植え方のコツや適した土や室内での育て方などが、上野先輩と文隆との会話に盛り込まれながら、視聴者に伝えられていく。


(へえ)
(ポインセチアって、ホントは寒さに弱いんだ)
(冬に、出回るのにね)


人目を引く真っ赤な葉が印象的で、クリスマスちっくなものの代表格的その植物は、それゆえ、てっきり寒さに強い冬の植物だと明子は思い込んでいた。
けれど、それが決して寒さに強い植物ではないということを知って、なるほどねえと感心した。

人を招けるていどに片付いた部屋の殺風景さに、何か観葉植物でも置いてみようかななどと、今まで大抵の植物を見るも無残な姿にして枯らしてきた過去など忘れたように、明子は考えていた。
その筆頭に、この季節ならポインセチアがいいかもしれないとその名を挙げていたのだが、これから帰宅時間も遅くなっていく。
いくら日中は日の当たる窓辺に置いておくとは言え、夕刻には冷え冷えとなる室内で、そのまま夜中まで放置しておいても果たして大丈夫なのだろうかと、明子は考え込んだ。


(花屋さんで、聞いてみようかな)
(つーか、どっかにさ、文隆くんみたいな店員さんのいる花屋さん、ないかなあ)
(いや、そんな贅沢は言わないわ)
(上野先輩でも、十分だよ)
(そしたらね、毎週でも、目の保養に通うのに)
(あたしが花屋のオーナーで、人を雇うとしたら、ぜったいに、男の子にするけどなあ)
(だって、花屋の客層の大半ってさ、間違いなく女性でしょ)
(店員は、男子限定っていう花屋があってもいいと、思うんだけどなあ)


明子がそんな腐ったことを考えているうちに、番組は終わりに近づいた。
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