リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
【高杉兄弟の一週間 月曜日】

「この時期って、寄せ植えも、赤と緑の組み合わせが多くなりますよね」
真っ赤なポインセチアを中心に、雪が被った木のように見えるコチアと蔓性で緑の葉がキレイなアイビー、数種類のパンジーを組み合わせて、少し大きめな寄せ植えの鉢を作っている文隆が、先輩店員・上野にそう尋ねる。
「まあ、クリスマスカラーだからね」
上野はしたり顔で、その質問に答える。
「なんで、クリスマスって赤と緑なんですか?」
「緑は永遠の命の象徴で、赤はキリストの血を象徴しているらしいよ」
「なるほど」
そうなのかと、感心したように頷いている文隆に、それくらいのこと勉強しておくようにと上野は笑う。
「北欧のほうでは、赤には魔除けの効果があるってことで、この時期、赤いものを飾るらしいしね」
「へえ」
そうなのかと言いながら、文隆は突然、赤いポインセチアの鉢を一つ手に取り、上野に押し付けるようにして差し出した。
「……、ナニしてるのかな?」
「魔物かどうか調べてみようかと。良かったです。人間で」
「今日の水揚げ作業、一人でやってもらうからな」
上野のその言葉に、冗談です、ごせめんなさいと文隆は手を合わせて誤り続けた。
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