リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
◆牧野孝平◆
かみなりが鳴り響く夜。
一人でいることが苦手だった。
あの日から。
かみなりは、悪夢を運んできた。
笹原と林田などという、できることなら関わりたくない、怖いツートップを交えての打ち合わせを終えて、疲労困憊という態の牧野が席に戻ったときには、すでに二十二時を過ぎていた。
窓の外では激しい雨が降っていて、牧野は顔をしかめた。
(この雨じゃ、傘をさしてもずぶ濡れだな)
窓越しに眺めた空の様子を見る限り、通り雨という感じではなかった。
「お疲れさん」
「ずいぶんかかったな」
ぐったりと座り込む牧野を見て、まだ仕事をしていた小林と君島がそう声をかけた。
「もう。頭が回りませんよ、俺」
「だろうな。それ、小杉が夜食にって」
牧野の机に置いてある二つのおにぎりを顎で指し示す小林に、「へい」と牧野は答えつつ、「何時ごろ、帰ったんですか」と、主語を省いて小林に尋ねた。
「十五分くらい前だな」
「雨、いつから降ってるんですか?」
「あいつが会社を出てすぐだな」
大丈夫だろうかと心配になった牧野は、携帯電話を出して、けれどすぐに仕舞った。
戻ってこないなら大丈夫だろうと、不安がる自分に、牧野はそう言い聞かせた。
一人でいることが苦手だった。
あの日から。
かみなりは、悪夢を運んできた。
笹原と林田などという、できることなら関わりたくない、怖いツートップを交えての打ち合わせを終えて、疲労困憊という態の牧野が席に戻ったときには、すでに二十二時を過ぎていた。
窓の外では激しい雨が降っていて、牧野は顔をしかめた。
(この雨じゃ、傘をさしてもずぶ濡れだな)
窓越しに眺めた空の様子を見る限り、通り雨という感じではなかった。
「お疲れさん」
「ずいぶんかかったな」
ぐったりと座り込む牧野を見て、まだ仕事をしていた小林と君島がそう声をかけた。
「もう。頭が回りませんよ、俺」
「だろうな。それ、小杉が夜食にって」
牧野の机に置いてある二つのおにぎりを顎で指し示す小林に、「へい」と牧野は答えつつ、「何時ごろ、帰ったんですか」と、主語を省いて小林に尋ねた。
「十五分くらい前だな」
「雨、いつから降ってるんですか?」
「あいつが会社を出てすぐだな」
大丈夫だろうかと心配になった牧野は、携帯電話を出して、けれどすぐに仕舞った。
戻ってこないなら大丈夫だろうと、不安がる自分に、牧野はそう言い聞かせた。