リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
-牧野っ
-牧野っ

床に崩れ落ちて、微動だにもせず、ただ、ぼんやりと空を見つめている牧野を見つけた君島は、その肩を揺さぶり、名を呼び続けた。

二度。
三度。


呼び続けた。


四度。
五度。


ひたすら、呼び続けた。


「牧野ッ」

ぴくりと、牧野の肩が跳ね上がり、ゆるりとその目が君島に向けられた。


不思議そうに。
瞬きもせず。
牧野は君島を見ていた。


「牧野。判るか? 俺が判るか? 牧野。牧野孝平っ 牧野っ」

パチパチと、牧野は瞬きを繰り返した。


(牧野って……)
(誰だっけ?)
(俺?)
(あ、俺だ)
(俺、牧野孝平だ)


牧野は、すうっと、息を吸い込んだ。
体を戒めている呪いの紐が、解けていく。
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