リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「ありがとうございます」
突然のことに驚いた目で、牧野と差し入れを交互に見やり、どうしたものかと明子は考えたが、けっこうですと断るのも大人気ないと躊躇われ、ここは素直に受け取っておこうと牧野に礼を告げた。
今夜に限ってうっかりとして、コンビニエンスストアまで晩ご飯を買いに行きそびれて、なんとなく、今までお茶だけでやり過ごしていた。今夜はこのまま、もうなにも食べないでおこうかと思い始めていたのだが、ふわりと漂ってきた匂いを嗅いだとたん、鳴り潜めていた空腹感が、むくむくと明子の中で顔をもたげてきた。
いったい、なにを差し入れてくれのかしらと、明子は袋の中を覗きこむ。
テイクアウト用らしき容器に、根野菜たっぷりの温かいスープが入っていた。
コンビニエンスストアで買ってきたような代物ではなかった。
「どうしたんですか? これ」
「あ? この先に『ビストロ イタバシ』って店があるだろ? あそこはスープとか、ちょっとした惣菜とかなら、テイクアウトできるんだ。知らなかったか?」
したり顔でそう告げる牧野には、ややイラッと感が募ったものの、聞き覚えのある店の名になるほどと頷き、いいことを教わったと脳内メモにインプットした。
牧野はメモ帳になにかを書き留めて、明子に「ほれっ」と差し出して来た。
なんだろうと首をかしげながら、明子は立ち上がりそれを受け取る。
電話番号が、そこに書かれていた。
「先に電話を入れて頼んでおけば、待たないで買ってこれるぞ」
珍しく親切な牧野に、明日を嵐かしらなどと考えながら、もう一度「ありがとうございます」とそう告げて、受け取ったメモ紙を明子は仕事用の手帳に挟んだ。
突然のことに驚いた目で、牧野と差し入れを交互に見やり、どうしたものかと明子は考えたが、けっこうですと断るのも大人気ないと躊躇われ、ここは素直に受け取っておこうと牧野に礼を告げた。
今夜に限ってうっかりとして、コンビニエンスストアまで晩ご飯を買いに行きそびれて、なんとなく、今までお茶だけでやり過ごしていた。今夜はこのまま、もうなにも食べないでおこうかと思い始めていたのだが、ふわりと漂ってきた匂いを嗅いだとたん、鳴り潜めていた空腹感が、むくむくと明子の中で顔をもたげてきた。
いったい、なにを差し入れてくれのかしらと、明子は袋の中を覗きこむ。
テイクアウト用らしき容器に、根野菜たっぷりの温かいスープが入っていた。
コンビニエンスストアで買ってきたような代物ではなかった。
「どうしたんですか? これ」
「あ? この先に『ビストロ イタバシ』って店があるだろ? あそこはスープとか、ちょっとした惣菜とかなら、テイクアウトできるんだ。知らなかったか?」
したり顔でそう告げる牧野には、ややイラッと感が募ったものの、聞き覚えのある店の名になるほどと頷き、いいことを教わったと脳内メモにインプットした。
牧野はメモ帳になにかを書き留めて、明子に「ほれっ」と差し出して来た。
なんだろうと首をかしげながら、明子は立ち上がりそれを受け取る。
電話番号が、そこに書かれていた。
「先に電話を入れて頼んでおけば、待たないで買ってこれるぞ」
珍しく親切な牧野に、明日を嵐かしらなどと考えながら、もう一度「ありがとうございます」とそう告げて、受け取ったメモ紙を明子は仕事用の手帳に挟んだ。