リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
【高杉兄弟の一週間 金曜日】
「ねえ。台所に見たことない、油、かな? なんか、そんなのが置いてあったけど、あれ、ひろ兄が買ってきたやつ?」
ようやく、自分の取り皿にあるわらび餅を、食べやすいサイズに切ることに成功した文隆は、そのわらび餅を頬張りながら弘明にそう問いかけた。
「あ? ああ。あれか」
場面が変わり、キッチンの調理台に置いてあるオイルがアップで映る。メーカー名と商品名やその効能のようなものが、テロップで流された。
「クレープシードオイルって言ってな。ぶどうの種を絞って作った油だ」
「なんに使うの、あれ?」
数秒間、商品を映すと、また場面は切り替わり、リビングの兄弟たちを映した。
「なんにって、料理にだよ」
明文のざっくりとした質問に、弘明は苦笑いを浮かべつつ、言葉を続ける。
「出戻りの誰かさんが、オリーブオイルの匂いは好きじゃないだの、なんだのと、我侭なこと言うからよ」
「別に。普通の油で俺は十分だ」
じろりと睨みつけながら、嫌味交じりのそんな言葉を吐き出す弘明に、俺が頼んだわけじゃないと、隆弘は抗議する。
「あんたの健康のためだろっ」
くわっと目を見開いて、弘明が一層激しく隆弘に言い募った。
「あのさ。少しは自覚しろよ。コレステロール抑えてくれて、動脈硬化とか、糖尿病とか、心筋梗塞とかの予防にもなるんだよ。花粉症とかにも有効って話もあるんだからな。兄貴にぴったりだろうが。オリーブオイルみたいな独特の匂いもないんだ。これ以上の我侭なんか許さねえからな。大体、少し痩せたのか?」
畳み掛けるように浴びせらた弘明の言葉に、仰け反るようにして怯みながら、隆弘は一キロと自棄になったような声で答えた。
「ねえ。台所に見たことない、油、かな? なんか、そんなのが置いてあったけど、あれ、ひろ兄が買ってきたやつ?」
ようやく、自分の取り皿にあるわらび餅を、食べやすいサイズに切ることに成功した文隆は、そのわらび餅を頬張りながら弘明にそう問いかけた。
「あ? ああ。あれか」
場面が変わり、キッチンの調理台に置いてあるオイルがアップで映る。メーカー名と商品名やその効能のようなものが、テロップで流された。
「クレープシードオイルって言ってな。ぶどうの種を絞って作った油だ」
「なんに使うの、あれ?」
数秒間、商品を映すと、また場面は切り替わり、リビングの兄弟たちを映した。
「なんにって、料理にだよ」
明文のざっくりとした質問に、弘明は苦笑いを浮かべつつ、言葉を続ける。
「出戻りの誰かさんが、オリーブオイルの匂いは好きじゃないだの、なんだのと、我侭なこと言うからよ」
「別に。普通の油で俺は十分だ」
じろりと睨みつけながら、嫌味交じりのそんな言葉を吐き出す弘明に、俺が頼んだわけじゃないと、隆弘は抗議する。
「あんたの健康のためだろっ」
くわっと目を見開いて、弘明が一層激しく隆弘に言い募った。
「あのさ。少しは自覚しろよ。コレステロール抑えてくれて、動脈硬化とか、糖尿病とか、心筋梗塞とかの予防にもなるんだよ。花粉症とかにも有効って話もあるんだからな。兄貴にぴったりだろうが。オリーブオイルみたいな独特の匂いもないんだ。これ以上の我侭なんか許さねえからな。大体、少し痩せたのか?」
畳み掛けるように浴びせらた弘明の言葉に、仰け反るようにして怯みながら、隆弘は一キロと自棄になったような声で答えた。