リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「おはようございます」

昨夜、散々なまでに迷惑をかけた二人の兄貴分は、すでに会社にいた。
君島は着替えていたが、小林はワイシャツだけを替えて、スーツは前日のままだった。


-おはよう。
-早いな。


君島は経済新聞を。
小林はスポーツ新聞を。
それぞれの机で広げ読んでいた。
その机に、牧野は買ってきたコーヒーを置いた。

「おう。ごちそうさん」

そう言って笑う君島は、そのまま言葉を続けて「ちょっといいか」と牧野に言い、会議室を顎で指した。
なんだろうと、首を傾げながら荷物を置いてその後に続くと、小林も後に続くように着いて来た。
肩越しに見たその顔に、牧野はげんなりとため息を吐いた。


(朝から説教かよ)
(勘弁してくれよ)


思わず、ため息が出そうになったが、それより先に小林に後頭部を叩かれた。

「朝っぱらからヤニ臭ぇっ 少し控えろよ。吸いすぎだ」

バカ。
鼻につく匂いに顔を顰めている小林に、牧野は「気をつけまーす」と、微塵も反省の色がない声で、さらりと答えた。

先に座った君島が隣に座れと牧野を目で促し、牧野は逆らうことも出来ず、不承不承という顔でイス一つ分空けた右隣に座る。
小林はイスを動かし、牧野の斜め前に陣取った。
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