リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「別に。これと言っては」
「だったら、なんで変わったんだよ」
「知りませんよ。俺が知りたいくらいですよ。なんか、思い立ったんでしょ」

身に覚えがないという牧野に胡乱な目を向けながら「とにかく、いつまでもうだうだとやってんじゃねえよ」と、一方的にどやしつける小林に、牧野は不貞腐れたように鼻を鳴らした。

「小林。まあ、そう言うなよ。牧野は牧野で、なにか考えがあるんだろうから」

不貞腐れたまま黙り込んでしまった牧野の顔を見て、苦笑しながら君島は小林を窘めた。

「だってよ。もう、面倒でよ。結婚が決まりゃ、ヒメももう諦めてよ、泣きながらお家に帰るだろうしよ。そうすりゃ、あのバカどもも、ちったぁ目が覚めて、しゃきっとするだろ」

小林の言葉に君島もまあなと頷き、牧野に静かに言い聞かせた。

「プロポーズは極端だけどな、でも、そろそろ、進展あってもいいんじゃないのか? なにがあったかは知らんが、また、昔みたいにな感じになってきたじゃないか、お前ら。今度はちゃんと気持ち伝えて、うまくやれよ」
「……伝えましたよ、もう」
「はあっ?!」

なら、もう付き合ってんだろがよっ
牧野の爆弾発言に、小林が目を向いて吠えた。

「てめえ、この、なにもねえみたいなことばっかり言いやがって」
「伝えましたけど、まだ、返事がねえっ」

握った拳でゴツンと頭を突付いた小林に、牧野は負けじと声を張って言い返した。
二発目をいこうとした小林の手が、その言葉でピタリと止まる。
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