リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
【高杉兄弟の一週間 金曜日】
「ほら。とりあえず、体重を計ってみろって」
立ち上がった明文が、部屋の片隅にに置いてあって体重計を隆文の足元に置いた。
体重計がクローズアップされて、メーカー名や価格、機能性といった情報が、画面に映し出された。
「健康診断なら、会社でやってるっ」
「健康なら、体重くらい、調べられても問題ねーだろ。無駄な抵抗はやめて、さっさと乗りやがりっ」
仁王立ちで隆弘を促す明文と、そうだそうだと明文を援護射撃する弟たちに負け、隆弘は不承不承という顔で体重計にのった。
77.8
表示されたその数字に、弟たちは一斉にため息をつく。
「な、なんだよっ、これくらいは許容範囲だっ、断じて肥満じゃ……」
「兄貴。見苦しい。もう立派な肥満って言うんだよ、こりゃ」
弘明は手を伸ばし、隆弘の腹の肉を抓みあげる。
「たか兄の身長だと、六十三くらいが標準なんだって」
携帯電話をいじって、なにかを調べ始めた文隆は、したり顔で隆弘にそう言い諭す。
「成人病って言葉、知ってっか? 良雄おじさんが、糖尿で苦労しているのを、兄貴だって見ているじゃん」
明文は親戚の名前を挙げて具体例をあげた。隆弘は観念したように頭を垂れた。
「判った。努力はする。うん」
辛うじてボタンが止まっているシャツの上から、丸く膨らんだ腹部を撫でて「確かにな、これはマズいよな、やばいな」と、隆弘もようやくその事実を認めて頷いた。
「少し、運動をしろよ」
「また、テニスとか始めたらいいじゃん。ラケットあるんだし」
「もともと、テニスは俺の趣味じゃないっ」
「ランニングとか」
「朝は七時前に家を出て、帰りはほぼ夜中って俺に、走る時間があるかっ」
やいのやいのと続く明文と弘明の言葉に噛み付きながら、隆明は小さく息を履きながら、ぽつりととこぼした。
「夕飯、抜くかな」
その言葉に、明文と弘明はほぼ同時に、わざとらしいまでのため息をつく。
「働いているんだから、食べなきゃだめだろ」
「女、子どもみたいなことを、言っているんじゃねえよ」
「だいたい、夕飯を抜くなんて。兄貴にできるわけないじゃん。ケーキを取り上げられただけで騒ぐくせに」
「それで腹が減ったとかなんとか言って、夜中にガツガツ食っていたら、最悪だぞ」
三男、次男の攻撃になにも言い返せず、しょんぼりと項垂れているだけの情けない長男の姿を見かねて、文隆はため息をこぼしつつ、助け舟を出した。
「ほら。とりあえず、体重を計ってみろって」
立ち上がった明文が、部屋の片隅にに置いてあって体重計を隆文の足元に置いた。
体重計がクローズアップされて、メーカー名や価格、機能性といった情報が、画面に映し出された。
「健康診断なら、会社でやってるっ」
「健康なら、体重くらい、調べられても問題ねーだろ。無駄な抵抗はやめて、さっさと乗りやがりっ」
仁王立ちで隆弘を促す明文と、そうだそうだと明文を援護射撃する弟たちに負け、隆弘は不承不承という顔で体重計にのった。
77.8
表示されたその数字に、弟たちは一斉にため息をつく。
「な、なんだよっ、これくらいは許容範囲だっ、断じて肥満じゃ……」
「兄貴。見苦しい。もう立派な肥満って言うんだよ、こりゃ」
弘明は手を伸ばし、隆弘の腹の肉を抓みあげる。
「たか兄の身長だと、六十三くらいが標準なんだって」
携帯電話をいじって、なにかを調べ始めた文隆は、したり顔で隆弘にそう言い諭す。
「成人病って言葉、知ってっか? 良雄おじさんが、糖尿で苦労しているのを、兄貴だって見ているじゃん」
明文は親戚の名前を挙げて具体例をあげた。隆弘は観念したように頭を垂れた。
「判った。努力はする。うん」
辛うじてボタンが止まっているシャツの上から、丸く膨らんだ腹部を撫でて「確かにな、これはマズいよな、やばいな」と、隆弘もようやくその事実を認めて頷いた。
「少し、運動をしろよ」
「また、テニスとか始めたらいいじゃん。ラケットあるんだし」
「もともと、テニスは俺の趣味じゃないっ」
「ランニングとか」
「朝は七時前に家を出て、帰りはほぼ夜中って俺に、走る時間があるかっ」
やいのやいのと続く明文と弘明の言葉に噛み付きながら、隆明は小さく息を履きながら、ぽつりととこぼした。
「夕飯、抜くかな」
その言葉に、明文と弘明はほぼ同時に、わざとらしいまでのため息をつく。
「働いているんだから、食べなきゃだめだろ」
「女、子どもみたいなことを、言っているんじゃねえよ」
「だいたい、夕飯を抜くなんて。兄貴にできるわけないじゃん。ケーキを取り上げられただけで騒ぐくせに」
「それで腹が減ったとかなんとか言って、夜中にガツガツ食っていたら、最悪だぞ」
三男、次男の攻撃になにも言い返せず、しょんぼりと項垂れているだけの情けない長男の姿を見かねて、文隆はため息をこぼしつつ、助け舟を出した。