リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
それに対して、どんな態度をとってくるか。
言葉にしてくれなくても、その態度から答えは判る。
判るだけの自信は、あった。
無理なら無理で仕方ないと、そう思いながら、心のどこかではぜったいに大丈夫だと、牧野は根拠もないのに確信していたりもした。
でも、それでも、心は怯えていた。
想像してしまう最悪の事態に、眠れない夜もあった。
根拠もない確信を振りかざしているくせに、行動に移せない自分が、情けなかった。

土曜日は、見ているような様子はなかった。
昨日もまだ、見ているような様子はなかった。

だからこそ、『大嫌い』も『見合い』も『島野』も全部。
なかったことにしてやるんだと、戻ってくる車中で、何度も自分に言い聞かせた。
そして、早く、気づいてくれと祈った。
俺の気持ちに、気づいてくれと祈った。
けれど、どうしてよりにもよって、今日、今、ここでなんだよと、牧野は頭を抱え呻いた。


怖くて振り返ることもできなかった。


(落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け……落ち着け、俺)


呪文のように唱え続けて、何度も何度も深呼吸を繰り返して。
やっと、冷静さを取り戻した牧野は、照れながら答えを求めて振り返り、




また焦った。


ぽろり。
ほろり。
明子の双眸から、止めどなく流れ落ちている雫に、牧野は焦りまくった。

答えを強請る牧野に、明子が答えの代わりに告げた事実には、怒りがふつふつと込み上げてきたけれど。


‐許して、ください


そう告げたその顔に、ほくそえむように笑う自分がいた。
< 815 / 1,120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop