リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「でも、最近、残業が増えてきたし。これから年度末に向けて、もっと忙しくなるじゃないですか」
終電に間に合わないかもしれないし。
そう考え込む明子に、牧野は「俺がいるだろう」と、さらりと言ってのけた。
「遅いときは送るって」
「いや、そんな。悪いし」
「お前な、まだ判ってねえのか。そこを右に曲がって、その先のホテルに入れ。今夜、きっちり教えてやるよ」
曲がれとふんぞり返って指図する牧野に、明子はひっくり返った声で「なにを言ってるんですかっ」と、牧野に言い返した。
「だって、牧野さん、これから、客先に行っていること、増えるじゃないですか」
「直行直帰もあるけど、よほどのことがない限りは、いったん会社に戻るよ、俺は。メールだなんだ、チェックしなきゃならねえもんも多いし。一応、課長なんだから、これでも。一つの客先に、ずっと直行直帰で張り付いてるってわけにはいかねえって」
そういうものなのかと頷きながら、明子に左手を牧野の手の中から抜いた。
牧野も左折する交差点と判り、すんなりと明子の左手を開放した。
それから、思い出したように明日の予定を告げた。
「そう言っておきながら、なんなんだけどな。明日は松山さんとこに直行するから。小林さんにメールは入れておいたけど、もし、なにか聞かれたら、そう言ってくれ」
「はい」
「でな、戻りもちょっと遅くなりそうなんだよ」
「そうなんですか」
「ん。ちと、厄介かもしれねえ。なんでさ、見舞い明後日にしねえ?」
「私はいいですけど」
私、一人で行ってきますよと言う明子に「俺も、赤木さんの顔を見てえから」と牧野は言い、だから一緒に行くと言葉を続けた。
「判りました。木曜に行くつもりで予定しておきます」
「悪いな」
そのほうがいいかもしれないと、明子も考えていた。
終電に間に合わないかもしれないし。
そう考え込む明子に、牧野は「俺がいるだろう」と、さらりと言ってのけた。
「遅いときは送るって」
「いや、そんな。悪いし」
「お前な、まだ判ってねえのか。そこを右に曲がって、その先のホテルに入れ。今夜、きっちり教えてやるよ」
曲がれとふんぞり返って指図する牧野に、明子はひっくり返った声で「なにを言ってるんですかっ」と、牧野に言い返した。
「だって、牧野さん、これから、客先に行っていること、増えるじゃないですか」
「直行直帰もあるけど、よほどのことがない限りは、いったん会社に戻るよ、俺は。メールだなんだ、チェックしなきゃならねえもんも多いし。一応、課長なんだから、これでも。一つの客先に、ずっと直行直帰で張り付いてるってわけにはいかねえって」
そういうものなのかと頷きながら、明子に左手を牧野の手の中から抜いた。
牧野も左折する交差点と判り、すんなりと明子の左手を開放した。
それから、思い出したように明日の予定を告げた。
「そう言っておきながら、なんなんだけどな。明日は松山さんとこに直行するから。小林さんにメールは入れておいたけど、もし、なにか聞かれたら、そう言ってくれ」
「はい」
「でな、戻りもちょっと遅くなりそうなんだよ」
「そうなんですか」
「ん。ちと、厄介かもしれねえ。なんでさ、見舞い明後日にしねえ?」
「私はいいですけど」
私、一人で行ってきますよと言う明子に「俺も、赤木さんの顔を見てえから」と牧野は言い、だから一緒に行くと言葉を続けた。
「判りました。木曜に行くつもりで予定しておきます」
「悪いな」
そのほうがいいかもしれないと、明子も考えていた。