リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
自分の明日の予定も、どこまで押してしまうか。
今の時点では、明子にもそれは見当が付かなかった。
今日は午後からだったが、明日は朝から幸恵のことを見なければならない。判りません、できませんが、朝から延々と繰り返されるに違いない。そう思うだけで、浮き立っていた明子の心は一気に萎んでしまった。
ダメなら切れと、小林にも念を押された。
でも、できることなら、切りたくなんてない。
そんな葛藤が、明子の胸を塞いでいくようだった。
ある意味、明日は正念場になるかもしれない。
そんな予感が、明子の胸に渦巻いた。
(どうしたら、いいのかなあ)
(木村くんと同期なんだもの)
(経験値は、大差ないはずだよねえ)
(やる気のあるなしってだけで、こんなにも、勝手が違うものなの?)
明日のことを考えれば考えるほど、明子の気持ちは沈んでいった。
とりあえずアプローチの仕方を、明日は少し変えてみるつもりではいるのだが、それが功を奏するかどうかは甚だ疑問だわと、明子はため息を吐いた。
「あの……、原田さんのことなんですけど」
どう指導すればいいのか、それがさっぱり判らない謎の生命体について、少し相談にのってもらおうかと明子はそう切り出したが、牧野からなにも返事がなかった。
どうしたのだろうと、ちらりと横目で牧野を眺めて、明子はやれやれと肩を竦めて小さく笑った。
人の運転じゃ眠れないと言ってから、まだそれほど時間は経ってはいない。
舌の根の乾かぬなんとやらだわと、シートに深々と身を沈めて寝息を立てている牧野に、明子は苦笑するしかなかった。
前方の信号が赤に変わったのを見て、明子はゆっくり減速させて車を止めた。
静かな夜の中で、息をするのも忘れたように、明子は眠る牧野の顔を見つめていた。
今の時点では、明子にもそれは見当が付かなかった。
今日は午後からだったが、明日は朝から幸恵のことを見なければならない。判りません、できませんが、朝から延々と繰り返されるに違いない。そう思うだけで、浮き立っていた明子の心は一気に萎んでしまった。
ダメなら切れと、小林にも念を押された。
でも、できることなら、切りたくなんてない。
そんな葛藤が、明子の胸を塞いでいくようだった。
ある意味、明日は正念場になるかもしれない。
そんな予感が、明子の胸に渦巻いた。
(どうしたら、いいのかなあ)
(木村くんと同期なんだもの)
(経験値は、大差ないはずだよねえ)
(やる気のあるなしってだけで、こんなにも、勝手が違うものなの?)
明日のことを考えれば考えるほど、明子の気持ちは沈んでいった。
とりあえずアプローチの仕方を、明日は少し変えてみるつもりではいるのだが、それが功を奏するかどうかは甚だ疑問だわと、明子はため息を吐いた。
「あの……、原田さんのことなんですけど」
どう指導すればいいのか、それがさっぱり判らない謎の生命体について、少し相談にのってもらおうかと明子はそう切り出したが、牧野からなにも返事がなかった。
どうしたのだろうと、ちらりと横目で牧野を眺めて、明子はやれやれと肩を竦めて小さく笑った。
人の運転じゃ眠れないと言ってから、まだそれほど時間は経ってはいない。
舌の根の乾かぬなんとやらだわと、シートに深々と身を沈めて寝息を立てている牧野に、明子は苦笑するしかなかった。
前方の信号が赤に変わったのを見て、明子はゆっくり減速させて車を止めた。
静かな夜の中で、息をするのも忘れたように、明子は眠る牧野の顔を見つめていた。