リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
月曜、火曜、水曜と、あれやこれやの試行錯誤の末に、朝ご飯はトーストで落ち着いた。

食パンにして一枚分ほど。
それに、はつみつやジャムをうっすら塗って。

バナナやキウィにヨーグルトを掛けて、ニンジンやキュウリの自家製ピクルスを少々添えて。

それから、ちょっと苦めのコーヒーと野菜ジュースをそれぞれ一杯ずつ。

バランスがいいのかどうかは判らないけれど、それくらいなら、それほど時間をかけずに用意できた。
一人暮らしでも、朝はやっぱり慌ただしい。
朝食や弁当作りに、あまり時間は掛けたくなかった。
だから、平日の朝食はこれでいこうとそう決めた。

けれど、今日は休日だった。
しかも、早起きした朝だった。
時間に追われても、いない。


(ビバ!)
(休日!)


楽しいことを数えていくように考えて、明子は気持ちを盛り上げようとした。
朝からいやなことを思い出し、げんなりしていた気分を切り替えようと、わざとらしいまでに盛り上げていた。


(時間は、たっぷりあるからね)
(今日は、少しだけ、手の込んだ朝食にしよう)
(お昼は、お弁当用に作り置きしておいた惣菜の残り物を、どっさりとのっけた丼ね)


そんなプランを、明子は頭の中で練り上げていく。

ひじき入りきんぴらごぼうに、小松菜のおひたし。
鳥のそぼろといり卵。
ブロッコリーと牛肉の甘辛炒め。
そんなものが、それぞれ小さなシリコンカップ一個分ずつ残っていた。


(ふふん)
(瓶詰めナメタケを、ちょいと加えた混ぜたご飯に、そいつをぜーんぶ、乗っけてさ、がっつり食べちゃうんだもんね)
(ちょいと、カロリーが高そうだけど、午後から歩いてくるもんねーだ)
(だからいいもんねー)


自慢するほどのことではないけれど、休日に早起きしたというだけで、明子は勝ち誇ったような気分だった。
ふんふんふんと、楽しい歌を鼻歌で歌いながら、そんなことを考えていたそのとき、明子の携帯電話が鳴った。
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