キスはおとなの呼吸のように【完】
「よし。そのままささえていてくれ」

営業の仕事を長くやっている大上先輩は力仕事があまり得意なほうではない。
ダンボールをかかえた両手をぷるぷる震わせながら、おっかなびっくり脚立を数段おりてきた。

慎重なうしろ歩きで、一歩、二歩。

背景には、背の高い灰色のスチールラックが、ゆく手をさえぎる壁のようにずらりと一列ならんでいる。
< 10 / 380 >

この作品をシェア

pagetop