キスはおとなの呼吸のように【完】
死んだおふくろの思い出――


以前わたしは、カズトに両親がいないという事実だけはきいていた。

カズトの両親は、カズトがハタチになる年に交通事故で他界したという。
以来カズトは実家の酒屋を継ぎ、ひとりで店をきりもりしている。

「ちょうど……」

しゃがんだときの目の高さとおなじ位置にある犬のステッカーをちらりと見ながらカズトがいった。
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