キスはおとなの呼吸のように【完】
「わたしも、このままでいいと思うよ。カズトにとって一番だいじな思い出なんだから。このシールは、ずっとこのままこの場所に貼っておいて、これから先も大切にしなきゃ」

そういって犬のステッカーからカズトのくちびるに視線を移す。

たまにこどものようなくだらないせりふを吐く、へんてこなおとなのカズト。

カズトはいつもと変わらずに、にこにこしながら掃除をしている。
なにがたのしいんだか、クリスマスソングを鼻うたしながら、集めたガラスの破片をほうきでちりとりにおしこんだ。

わたしは今すぐにでも抱きしめてキスをしたい、そんな衝動に駆られた。
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