キスはおとなの呼吸のように【完】
この部屋にはほかの調度がなにもなかった。
テーブルもなければ、書類棚のたぐいもない。
わたしの部屋よりもさらにシンプル。

あるのはまっすぐ目のまえにある兼田社長の目と、ブースのそとからびしびし感じる四葉屋社員の視線だけ。

なんというか、まえにも目、うしろにも目という感じで、わたしは見世物にでもなったみたいでおさまりが悪かった。
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