キスはおとなの呼吸のように【完】
「かしこまりました。それではまた後日、あらためておうかがいいたします。お忙しいなか、われわれとの時間をつくっていただき、まことにありがとうございました」

わたしの目のまえで兼田社長は勝ち誇ったような笑顔になりイスを立ちあがる。

くやしさをぐっとかみしめ、大上先輩の言葉にならって頭をさげた。

「よろしくお願いいたします」

そしてわたしたちは、もう一度深く頭をさげると社長室をあとにした。

ガラス張りのブースのそとからは痛いほどの視線がこちらにそそがれていた。
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