キスはおとなの呼吸のように【完】
「たぶんむこうがわざわざおれたちを呼びだしたのには、そんな理由があるんだろうな。われわれは客だ。おまえたちより立場がうえの人間だ。そんなことを今日、おれたちにつたえたかったのかもしれない」

長く営業をやっていれば、こういうことはよくあることだ。
そんなふうに先輩はいう。

「おれだって気分はよくないさ。だが、こういうことがあるのもじじつだ。それに、こういう場合も切り口がないわけではない」

大上先輩はわたしにではなく、自分自身にいいきかせるようにいった。
< 147 / 380 >

この作品をシェア

pagetop