キスはおとなの呼吸のように【完】
「シオリ」

ヴァンからおりてきたカズトは、わたしたちに気づいたようだ。
心底びっくりした声でわたしを呼ぶ。

すでに駅にむかって歩いていた大上先輩は足をとめて、こちらをふりむいた。
居酒屋のドアのまえでむかいあうわたしとカズトを、すこし離れた場所から交互に見ている。

なんというか、ひどく気まずい。

十二月の夜の空気がさらに冷えこんだ。

商店街のどこかのスピーカーからはひどく場違いなジングルベルが無関心に鳴っている。
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