キスはおとなの呼吸のように【完】
「ええ。もちろんです。うちは千客万来ですから。今後とも三本酒店をごひいきに」

大上先輩は、がらがらと引き戸をあけてお店をでていく。
わたしはカズトとお店に残る。
営業の仕事が長い大上先輩は、方向感覚がわたり鳥なみだ。
はじめておりた駅でも道に迷うことはないだろう。

ドアがしまると、わたしはぐったり疲れてしまっていた。
ぬるくなったバドワイザーを口にふくむ。

やはり職場の上司とプライベートでお酒なんてのむもんじゃない。
炭酸の抜けたぬるいビールがやたらとおいしく感じてしまう。
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