キスはおとなの呼吸のように【完】
そのころからわたしのプライベートにも、ほんのすこしの変化がうまれた。

彼氏と上司にはさまれる気まずい緊張感はもう二度と味わいたくないと思ったのだが、大上先輩が三本酒店にまたいきたいといいだしたのだ。

ふだんつかう路線を帰り道で途中下車し、一本二百十円の缶ビールをのむ。

駅の近所で時間のロスもほとんどない。

お酒があまり得意ではない先輩が、その日以来毎日いきたがるようになったくらいだから、やはり価格と時間は営業職の人間にとって、かなり魅力的に見えるようだ。
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