キスはおとなの呼吸のように【完】
「大上です。いつもお世話になっています」

駅から遠ざかるように早足で歩きながら電話を受けた。
限られた時間のなか、予定のルートはその日のうちにまわりきりたい。
午前中とおなじように、むだ話なんてするまもなく、わたしも大上先輩のうしろに続いた。

事情がぜんぜんわからないが、電話にむかって大上先輩は、ふたこと、みこと返事をしている。

と。

とつぜん、先輩がぴたりと足をとめた。
はずんだ調子で、おどろきの声をあげる。
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