キスはおとなの呼吸のように【完】
「それではのちほど」

通話を切ると大上先輩はいう。

「予定を変更して、これから四葉屋さんにいく。話をききたいらしい」

それからこんなせりふをつけくわえた。

「移動と調整で三十分かかっても、一時間以上も考える時間が残る。さんざん門前払いをされたんだ。これがきっと最初で最後のチャンスだと思う」

先輩はくるりときびすを返して、ふたたび駅にむかって歩きだす。

「くわしい話は移動しながら話す」

いまだ事情はまるでのみこめなかったが、わたしもあわてて、大上先輩のあとに続いた。
< 243 / 380 >

この作品をシェア

pagetop