キスはおとなの呼吸のように【完】
「おそらく、その点をクリアにすれば、兼田社長はうちと取引をするつもりだろう。だが」

大上先輩はそこで言葉をたっぷりためた。

「納得できなかったり、兼田社長が得にならないと思ってしまったら、その時点で四葉屋さんとの契約の道は断たれる。毎日顔をだしても門前払いをくらう会社なんだ。もう二度とおれのケータイに連絡などしてこないだろう」

先輩の言葉には、真冬の寒さをはね返すほどの熱がこもっていた。
ここが正念場だということが、びしびしとつたわる。

「袴田」

大上先輩は自分に気合いをいれるようにいう。
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