キスはおとなの呼吸のように【完】
らちがあかないと思ったのか、大上先輩は話題を変えた。
会話をかわして相手からなにか情報を引きだそうとしているらしい。

フロアを歩いて気がついた四葉屋の光景を口にする。

「このオフィスには業務用のコピー機が見あたりませんでしたが、紙類の印刷やコピーはどのようにされているんですか」

それはわたしも気づいたことだ。
社員のデスクにはそれぞれ家庭用プリンターが設置されていた。

だが、そこからなにかを引きだせるとは考えもつかなかった。

「ああ」

兼田社長はなんでもないといった調子でこたえる。
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