キスはおとなの呼吸のように【完】
この交渉ははっきりいって難航どころの話じゃない。
どちらかといえば遭難に近い。

太平洋のまんなかに迷いこんだプランクトンにでもなった気分だ。
まるで相手にされていないということくらい、スキルの低いわたしにでもわかる。

この兼田社長の対応には、さすがの大上先輩も少々言葉に詰まってしまった。
わたしがなにかフォローはできないものか。

頭のなかの引きだしを、手あたりしだいにあさってみる。

そのとき。

わたしたちの背後から声がした。
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