キスはおとなの呼吸のように【完】
横柄できびしい兼田社長のことだから、このポストイットの一回だけで、ほかの商品を今後買ってくれるかまではまだわからない。

買ってくれるとしても、まだまだ時間がかかるかもしれない。

だけど、ひとまず今はよしとしよう。

わたしと大上先輩は、社長室を抜けると深く頭をさげて四葉屋のオフィスをでた。

思いのほか時間が経過していたことにようやく気づく。

時刻はすでに十六時半。

日暮れ間近の十二月の空のしたにでると、心の底からよろこびがこみあげた。
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