キスはおとなの呼吸のように【完】
「なに、カズトくん。年したのくせに説教するの」

酔っているとはいえ、めちゃくちゃないいぶんだった。

「たかだか二十五やそこらで自分の店を持った気になって、それで勝ち組か? 成功者か? こっちは毎日寒空のした、朝から晩まで歩きまわって仕事をしている。自分より若いやつにも頭をさげて、いやみをいわれ、門前払いをくらって、それでようやく一件の契約をもらう。その気持ちがあんたにわかるのか」

それはカズトにいったというよりも、横柄で傲慢な四葉屋社長への文句であるようにわたしにはきこえた。

それでわかった。

大上先輩があまり得意ではないお酒を毎日のみたがっていたのは、ここ数週間のストレスからくるものなのだということが。
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