キスはおとなの呼吸のように【完】
大上先輩は完全に酔いがさめてしまったようで、肩を落とし穴のあいた引き戸をあけた。
地面に落ちずにぶらさがっていた破片が、落下もできず、もとにもどるわけにもいかず、どうすることもできずに震えていた。

「先輩っ」

わたしは叫んだ。
思いのほか、おおきな声がでてしまう。
だが、大上先輩は足をとめない。

先ほどのはしゃぎかたのなごりも見せず、ちいさくなってお店をでていく。
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