キスはおとなの呼吸のように【完】
そとにでると十二月の夜の空気がひりひりと目の裏と鼻の奥を刺激した。

割れたガラス戸のまえに業務用のヴァンが身動きできずに停まっている私有地を抜け、商店街を20メートルほど進んだ。
そこでようやく大上先輩に追いついた。

帰宅ラッシュの時間がすぎ、ひと気のなくなったさびれた商店街は、闇と無音のなかにクリスマスのイルミネーションだけがぴかぴかと無関心に輝いていた。
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