キスはおとなの呼吸のように【完】
カズトは割れたガラスの掃除をしているようだった。
真っ暗な私道には立ちのみスペースからこぼれる光だけが明るく、ちいさくなったカズトの影を長く地面にのばしていた。

わたしはそっと、うしろから近づく。
静寂のなか、ヒールの音がしずかに響いた。

急に声をかけておどろかせてはいけない。
ひとつ息を吸ってから、すぐ目のまえのカズトの背中にむかっていった。
< 326 / 380 >

この作品をシェア

pagetop