キスはおとなの呼吸のように【完】
「ごめんね」

わたしは口いっぱいに血の味を感じながら、あやまった。
カズトが指の痛みで泣いているんじゃないってことは、いくらにぶいわたしにだってわかる。

割れてしまった裏口のすりガラス。
踏まれて汚れた犬のステッカー。
地面で砕けた唯一の両親との思い出。

言葉になんかしなくても、そんなことは容易につたわる。
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