キスはおとなの呼吸のように【完】
「たぶんシオリがなにもいわなかったっていうことは、なにもいうべきことがなかったっていうことなのかもしれないし、いわないほうがいいことなのかもしれない」

黙っているとカズトはいう。

「自分は人にいやな思いをさせてはいけない。不快な思いをさせてはいけない。シオリはいつも、そんなふうに思っているのかもしれないけど、いわなければつたわらないよ」

それは大上先輩にもいわれたせりふだ。

カズトはへたくそな笑顔に、さらにへたくそな笑いを重ねた。
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