キスはおとなの呼吸のように【完】
わたしがひとり暮らしをする駅のまえにはミニチュアサイズの商店街が短く一本のびている。
いちおう生活に必要なお店がふじゅうぶんながらもひととおりそろっている、そんなさびれた商店街。
その中腹に目的の三本酒店はある。

わたしはどこかのスピーカーから流れる季節がらのクリスマスソングを耳の端にききながら目的の場所にむかった。

底抜けに明るい『赤鼻のトナカイ』は、西洋ふうのかけらもない商店街の冬の空気にぽつんと浮いて、それが妙にさみしくきこえた。
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