キスはおとなの呼吸のように【完】
「うわっ。びっくりした」

わたしがとつぜんうしろから声をかけたものだから、三本酒店の若い店主はおどろきの声をあげた。
もともとおおきな目をまんまるに見ひらいて、こちらをふりむく。

「なんだ、シオリか。おどろかさないでくださいよ。気配を消して近づくなんてシオリは空気みたいな人ですね」

カズトは日暮れすぎの十二月の気温よりも寒いギャグを飛ばして笑顔を見せる。
彼の基本的な表情は明るい笑いだ。
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