キスはおとなの呼吸のように【完】
「もうお店あいてるの」

わたしがいうとカズトがこたえる。

「立ちのみは今日はまだオープンしてないけど、鍵はさっきあけておいた。お客さんもまだひとりもきていないから、シオリひとりでひろびろつかえるよ」

バーカウンターが一枚張られただけの三本酒店の横長のせまい立ちのみスペースを想像した。

おとなが五、六人横にならべばぎゅうぎゅう詰めになって身動きがとれなくなってしまうお店。

縦の幅は、靴みっつぶんにも満たないほど。
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