キスはおとなの呼吸のように【完】
「重くないの」

わたしがきくと、カズトは心の底からしんどそうにこたえる。

「重いよ、めちゃくちゃ。もう泣いちゃいそうなくらいに」

じょうだんなんだか本気なんだかわからないが、それならひとつずつ運べばいいのになと思った。

カズトは露出する腕と首すじに血管を浮かせながら、まっかな顔で平静をよそおう。
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