キスはおとなの呼吸のように【完】
私道を5メートルほど進んだ先にある裏口のガラスの引き戸をあけ、立ちのみスペースに足を踏みいれる。

窮屈な幅しかない店内は、背すじをしゃんとのばしていないと歩けない。
バーカウンターやら引き戸やらに、容易に肩が接触する。

ふと足もとを見ると、立ちのみスペースの一番端にちいさなハロゲンヒーターが一台おいてあった。

つい最近まではなかったものだ。

電源がはいっていて、あたたかいオレンジ色の光がわたしをむかえてくれた。
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