キスはおとなの呼吸のように【完】
「前回みたいな失敗は、もうしたくないから」

そういって奥歯をぐっとかみしめる。
カズトとつきあいはじめたあの日のできごとは、わたしのなかではよろこびと同時につらい記憶として今でも思い出の階段のしたのほうに残っている。

わたしのおさなさのせいで、うまくいきかけた市橋(イチハシ)商事との営業をふいにしてしまったという過去。

決して消えないわたしの記憶。
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