キスはおとなの呼吸のように【完】
酔っぱらいはやっかいだ。
お酒がはいり空気中の有害物質になったサラリーマンは、わけのわからないやつあたりを誰にではなく、横むきになったびんにむかって叫んでいる。

となりにいた常連ふたりは困った顔をしてお酒をのみほすと、そそくさと立ちのみスペースを去っていった。

「ごちそうさま」

「カズちゃん、またくるね」

思いおもいの社交辞令のせりふを残して、ガラスの引き戸が無常にしまる。
明らかに、めんどうごとにかかわりたくないといった雰囲気だ。
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