Vrai Amour ~駿の場合~
1.運命の輪
奥様と初めてお会いしたのは、いつだっただろうか

あの頃はまだお互いに小さな子供で

自分たちの運命がどこに向かって動いていたのか

そんなことはわからずにいた。




私は桐島家の執事を代々務めている朝比奈家に生まれた。




朝比奈家は桐島家の敷地内に居住を許されている。


いわば、子供同士は特に厳しい規約もなく、幼馴染として育っている。

そうして、私と奥様も幼馴染として育てられていた。






けれど、高校に進学するころになるとやはりそういうわけにはいかなくなる。


子供じゃない、大人じゃない、けれど自分で進む道をそろそろ決めなければいけなくなる時期。


「駿、お前は桐島家の執事になるんだ」


両親からは小さいころからそう言われ続けてきた。

実際父親の仕事を目にしたこともある。

背筋を伸ばし、当たり前のようにご主人様の少し後ろで控えめにしている父を見て、とても誇りに思っていた。

だから、自分も同じ仕事をするのがとても誇らしかった。
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