Vrai Amour ~駿の場合~
「左様ですか。それでは明日はお時間が早いですので、お早めにおやすみくださいませ」
執事はそう言ってドアを閉めた。
途端にほっと力が抜ける。
「ごめんね、駿くん」
その声にそろりとクローゼットから抜け出ると、ふわりといい香りがした。
「え?」
何が起きたのかわからない。
ふわりと香るいい匂いは僕の腕の中に顔をうずめたさっちゃんの髪の香りだった。
「さ、さっちゃん?」
途端に心臓は激しいくらい高鳴って、僕はどうしてこうなったのか理解できずにいた。
「・・・抱いて」
混乱した頭に響き渡った声。
その言葉の意味など理解できるはずがない。