【完】お隣さんは同級生〜一人暮らしの2人〜㊦


それは少し古ぼけた建物だった。


白かったハズの壁は薄汚れていて、黒い看板には赤い文字で“SALT”と書かれていた。


木製のドアを押せばギィと、なる。


少し煙たい、ビリヤード場。


カウンターで、お金を払い店内に設置してあるビリヤード台のひとつに行く。


「ここで、この前言ってた響って奴とかと、よくビリヤードしてた」


その頃を思い出す様に、懐かしそうに話す柾樹に“そっか”と告げて設置してある椅子に座る。



柾樹も隣に座った所をみると、ビリヤードをする気はないのだろう。



「…なんか柾樹にとって、暖かい場所なんだね?」


「あぁ」


その顔はとても、穏やかで、ここが掛け替えのない存在なんだと、私にも伝わってくる。




「……柾樹?」


店内にいる人達をグルリ眺めた柾樹に不意にかかる声。


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