酒の名たるや
熊のような体格の髭面が、カウンターに座る青年に絡んできた。
青年は酒屋の集まりの中でも人一倍小奇麗で、酒と騙る下品な毒も実に行儀よく飲んでいた。
「嗚呼、魔王よ!
この世に生まれおちた祝福されぬ哀れな魔王よ!
あなたはその手になにを抱き、なにを犯して眠るのです、この不条理極まりない世界に飛び込んで一体なにがほしかったのです!」
上手な役者は意外にもこんなところにいるもので。
顔さえよけりゃ舞台にもたてたろう、男の声は張りがよく役者らしい。