君想 ~友達から始まった恋~
6時間目。ようやく体育の時間になり、俺たちは今グランドに来ている。
「莉緒、大丈夫か?」
「お前は俺が負けると思ってるわけ?」
「…いや、思ってねーけど」
雅也が不安そうな声を出す。
雅也とは小学校からの仲で、所謂幼馴染みだ。こいつは二年ながらサッカー部の中心選手らしい。
でもって、愛菜と仲のいい川内の事が好き…らしい。
「お前が負けるとは思ってねーけど、注意はしといたほうがいい。あいつ…マジ速いから」
「知ってんのか?」
「中学の頃、サッカーの試合で何回か対戦したことがあるんだ。今はサッカーやめちまったみたいだけど、上手かったよ」
悪いが、お前の忠告は頭まで届かなかったよ。
あいつの速さなんか関係ねえ。俺は相手関係なく、ぜってえ勝つ。
「じゃあ原田と吉瀬、スタートに着け」
ふと愛菜の方を見る。一瞬目が合ったように思えたが、すぐに逸らされた。
「位置に着いて。よーい……ドン!!!」
ダッと足を蹴り上げ、指先に力を入れる。
ちょっと待て、今こいつ…笑った?
ほぼ同時にスタートし、砂埃と共にほぼ同じタイミングでゴールインした。
「0,1秒差で、吉瀬の勝ちだな」
なんとか勝ったみたいだな…。
「…って」
立ち上がろうと足に力を入れると、右足に激痛が走った。思わずバランスを崩し、その場に座り込んだ。
「…莉緒、大丈夫?」
「もしかしてお前、足痛めたんじゃ…」
「いや、大丈夫だ。こんなもんどうってこと…っ」
「どう見たって大丈夫じゃねえだろ。愛菜ちゃんと椎奈ちゃんは先生に次の授業遅れるって言っといて。ほら、莉緒。肩、掴まれよ」
仕方なく雅也に肩を借り、保健室に向かった。