ずっと消えない約束を、キミと〜雪の降る海で〜
お兄ちゃんは、お盆をあたしの顔の前に突き出した。


温かそうなおにぎりが二個とお味噌汁とだし巻き卵、そしてウサギ型に切られたリンゴ。


あたしの元気が無い時は、決まっていつもウサギのリンゴが出て来る。


小さい頃のあたしは、どんなに泣いていてもウサギのリンゴで笑顔になっていたから。


「渚の好きな物ばっかりだろ?」


「もう、子どもじゃないのに……」


「母さんや親父からすれば、俺達はまだまだ子どもなんだよ」


お兄ちゃんは眉を寄せて小さく笑った後、あたしの唇にウサギのリンゴを押し当てた。


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